ベッドタウンとしての立ち位置と未来を考える
この記事の結論ですが
・坂町の人口はおよそ1万2000人台で、面積のわりに人がぎゅっと詰まっている
・安芸郡の中では一番小さい町だが、海と山と道路と線路が重なって景色の存在感は強い
・福島県鏡石町と千葉県東庄町も人口はほぼ同じだが、土地の使われ方や役割はかなり違う
・これからの坂町は、
ゆるく減っていく
今の規模で踏ん張る
海沿いベッドタウンとして少し見直される
だいたいこの三つくらいのシナリオが見えてくる
・どれになるかは断言できないけれど、道路や交通、海辺の使い方しだいでだいぶ姿が変わりそう
ここから先は、廿日市に住む一人の住民の目線で、もう少し噛み砕いて書いていきます。
坂町は「さかちょう」
場所と雰囲気のおさらい
まず読み方から。
広島県安芸郡の坂町は「さかちょう」。
広島に長く住んでいる人でも「さかまち」と口にしてしまうことがあって、そのたびに小さく訂正する場面がちょこちょこあります。
場所は、広島市中心部と呉市のちょうど中間あたり。
廿日市から車で行くときは、国道2号を東へ走り、海田大正交差点で右折して国道31号に入るのが定番ルートです。ここから先は左に海、右にJR呉線の線路と住宅地が続くエリアに入ります。その細長い帯の真ん中あたりが、坂町。
正直、廿日市に住んでいると、坂町は「目的地」になるより、「呉や熊野に行くときに必ず通る場所」というポジションになりがちです。けれど、通るたびに「コンパクトな町だけど、ただの通過点と片づけるにはもったいないな」とも感じています。
坂町の人口と暮らしの密度
坂町の人口は、ここ数年ずっと1万2000人台で落ち着いています。最近の数字だと1万2300人前後、世帯数はおよそ5700世帯。(坂町の最新人口)
町の面積は約16平方キロメートル。1平方キロメートルあたりに直すと、ざっくり700人台が暮らしている計算です。数字だけ聞くとピンとこないかもしれませんが、実際に平成ヶ浜あたりを歩くとこの「詰まり具合」がよく分かります。
海沿いぎりぎりまでマンションと戸建てが並び、そのすぐ裏を国道31号とJR呉線が通る。坂駅の正面にはパルティフジ坂というショッピングセンターがあって、ツタヤ、ヤマダデンキ、ユニクロ、やよい軒などがまとまって入っています。
日曜の11時ごろに車で行くと、駐車場はすでにかなり埋まっていて、立体駐車場の上の階に回されることもあるくらい。夜19時ごろになると、仕事帰りの人、部活帰りの高校生、子連れの家族が入り混じっていて、「この町の生活の重心はここだな」と一目で分かります。
高齢化もそれなりに進んでいて、65歳以上は全体の3割前後。若い世代もいるけれど、町全体の空気としては「落ち着いたベッドタウン」という感じに少しずつ寄ってきている印象があります。
安芸郡の中で見る坂町の人口規模
安芸郡全体で人口をならべると、だいたいこんな感じです。
・府中町 約5万2000人
・海田町 約3万1000人
・熊野町 約2万3000人
・坂町 約1万2000人
数字だけ見れば、坂町はきれいに末っ子ポジションです。
国道2号で広島市内から東へ走ると、府中町のあたりは店も車も人も多くて、常ににぎやかです。そこから海田市駅付近を抜け、海田大正交差点を右折して国道31号に入ると、海田町の住宅地がしばらく続きます。(海田町の人口減少記事)
さらに南へ走り、坂町に入ったタイミングで景色がガラッと変わります。視界の左側に海、右側にパルティフジ坂、その奥に山。人口は安芸郡でいちばん少ないのに、「あ、別の町に来たな」とすぐ分かるくらい、風景の印象は強い。
人口の歴史をざっくりたどると、1970年前後には1万4000人近くまで増え、その後少しずつ減少。平成の途中、平成ヶ浜の開発などもあって1万3000人台に持ち直した時期があり、令和に入ってまた1万2000人台に落ち着きつつある、という流れです。
増えているわけでも、急激に減っているわけでもない。
階段ではなく、なだらかな滑り台をじりじり降りているようなイメージに近いかもしれません。
鏡石町と東庄町と比べると見えてくる坂町
ここからが少しマニアックな話になりますが、坂町と人口規模がほぼ同じ町として、福島県鏡石町と千葉県東庄町があります。(全国市町村人口ランキング)
三つとも人口は1万2000人台。数字だけ並べると、ほとんどコピーしたような近さです。
・坂町 約1万2000人 面積
約16平方キロ
・鏡石町 約1万2000人 面積
約31平方キロ
・東庄町 約1万2000人 面積
約46平方キロ
1平方キロメートルあたりの人口で見ると、
・坂町 およそ700人台
・鏡石町 300人台
・東庄町 200人台
だいたいこのくらいの差になります。
鏡石町は東北本線と東北自動車道の近くにある内陸の田園地帯で、まわりは田んぼと畑が中心。東庄町は利根川沿いの農業地帯で、広い畑と川の風景が主役です。(鏡石町の人口推移)
これに対して坂町は、
・瀬戸内海に面している
・平地の多くが住宅地と工業地帯と商業施設で、山はその後ろに控えている
・広島市と呉市のあいだのベッドタウン
という組み合わせになっています。
同じ人口1万2000人でも
鏡石町と東庄町は「広い土地に人が点々と暮らしている町」
坂町は「狭い平地に人と店と道路がぎゅっと乗っている町」
こう書くと、かなり雰囲気が違うのが分かります。
それぞれの町の役割も違っていて、
・鏡石町 田園の中の生活拠点であり、高速道路や鉄道の結節点に近い場所
・東庄町 農業中心で、近くの港や工業地帯を支える生産地
・坂町 広島都市圏のベッドタウンであり、臨海工業地帯の顔も持つ町
という感じです。
人口の数字だけ見ると同じカテゴリーに入れられそうですが、「何を支える町なのか」という役割の違いが、これからの人口の増え方、減り方にもじわじわ効いてきそうです。
坂町の人口がこれからたどりそうな三つのシナリオ
坂町の今後を考えるとき、個人的には三つくらいのシナリオが頭に浮かびます。
シナリオ1
ゆるやかに減って東庄町寄りになっていく
広島市内の職場や学校の重心が、もっと都心寄りか、逆に西の廿日市方面に寄っていく。家を買う場所として坂町を選ぶ若い世代が少しずつ減っていく。
アパートや団地の空き部屋がじわじわ増え、坂駅で降りる人もなんとなく少なくなっていく。パルティフジ坂の夜の混み具合も、今より一回り落ち着いてくる。
そうなると、数十年後の坂町は、今の東庄町のように「高齢者がかなり多く、若い人は少数派」という構造に近づいていくかもしれません。
シナリオ2
1万2000人前後で何とか踏ん張る
国道31号の渋滞対策や歩道整備が進み、通勤通学が少しだけ楽になる。坂町内の子育て支援や住宅支援も続いて、海沿いのベッドタウンとしての魅力が「そこそこ」保たれる。
人口は1万2000人を少し割り込むくらいまで緩やかに減るけれど、学校や商業施設が一気に成り立たなくなるほどではない。鏡石町と似たようなラインで、なんとか持ちこたえる未来です。
個人的に、一番現実味があるのはこのあたりかなと感じています。劇的ではないけれど、じわじわ現実的な線。
シナリオ3
海沿いの暮らしが見直されて、少しだけ若返る
フルリモートや週に数回だけ出社する働き方が、今よりもずっと一般的になる。
毎日は広島市の中心部に行かなくてもいいなら、海が見える場所で暮らしたい。そんな人が少しずつ坂町を選び始める。平成ヶ浜のマンションをリノベして住む若い夫婦や、ベイサイドビーチ坂で朝ランをする人が目に見えて増えてくる。
人口全体がどんどん増えるとは思いませんが、年齢構成のバランスがほんの少し若い方向に戻っていく可能性はあります。坂町が「海沿いの静かなベッドタウン」というニッチなポジションで再評価されるパターンです。
どのシナリオが現実に近づいていくかは、さすがに読み切れません。ただ、鏡石町や東庄町の姿を横目で見ながら坂町を眺めていると、「どの線をたどってもおかしくない、ちょうど分かれ道あたりにいる町」なのは確かだなと感じます。
廿日市から見た坂町と、あなたの町のこと
廿日市にいると、普段の買い物は楽々園のイオンタウンで済ませてしまうことが多くて、レジに並びながら「この町の人口が何人か」なんて考えることはまずありません。
でも、たまに気分を変えて国道31号経由で呉方面に向かい、夕方にベイサイドビーチ坂の前の信号で止まると、ふっと考えます。
この海の向こうと、山のふもとで、1万2000人くらいがそれぞれの生活をしている。今ごろ家でごはんを作っていたり、風呂に入っていたり、明日の仕事や学校のことを思っていたりするんだよなと。
鏡石町も東庄町も、人口だけなら坂町とほぼ同じです。けれど、海沿いで、広島市と呉市の通勤圏のあいだにいて、山と海にぎゅっと挟まれているという意味では、坂町はかなり独特な立ち位置にいる町でもあります。
これから先、
ちょうどいいサイズのベッドタウンとして落ち着くのか
高齢化の坂を一気に下りていくのか
海と都市のあいだの新しい暮らし方の受け皿になるのか
どれになるかは分かりません。
ただ、坂町の人口や日常風景を一度じっくり眺めてみると、「自分の住んでいる町の未来」も少し違った角度から見えてくるかもしれません。
あなたの町の人口はどれくらいか
朝と夕方の駅前の様子はどうか
近所のスーパーはどの時間帯が一番混んでいるか
それを一度、坂町と同じように思い浮かべてみると、数字だけでは見えない「うちの町の立ち位置」が、じわっと浮かび上がってくるはずです。